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第34回 橋本健太 氏 |クックパッド株式会社 最高技術責任者 このエントリーを含むはてなブックマーク
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クックパッドセミナー
大学での研究
川井: Railsを選ばれたのにはどういう経緯があったのですか?
橋本: 前回のリニューアルの時にRailsを見つけてきて、やはり素早い開発ができるんじゃないかという点で使いたいと思っていました。外注でサービスを作っていただいていた時に、どうしても意識のずれがあるところのひとつが、アジャイル開発と伝統的な開発の方法だったんですよ。それで説得しようとするときに、アジャイル開発というのを自分でもっと理解しないといけないと思って、勉強をしたり色々討論もして、理想的なアジャイル開発はこういうものだ、という思いだけがあったんですね。それを実現する方法を考えた時に、Railsは本当にアジャイルになりそうだというのがわかったんです。
川井: なるほど。
橋本: クックパッド株式会社|橋本健太氏ただ当時はまだβ版だったし、エンジニアは自分一人という状況でリニューアルまでこぎ着けないな、とわかったのでその時は選ばなかったんです。だけど、あの時自分が選ばなかった技術がそれからじわじわと流行ってくるわけじゃないですか(笑)
川井: そうですね(笑)気になりますよね。
橋本: それでタイミングを計っていました。リニューアルの方は、広告事業が伸びてきたこともありまして、料理が楽しくなるような会社という広告事業をしっかり作っていこうという方に労力をかけていたんですけれども、だんだんまたサービスの方に移れるというフェーズになってきたときに、ColdFusionで行くのか、思い切ってRailsで行くのかということを考えました。Railsを選ばない場合はどうなるかなということを考えてみたときに、Railsみたいな、自分たちが持っている技術よりもアジャイルな開発ができる集団がクックパッドを作ったらどうなんるんだろう、なんていうことを考えて。それは全然だめじゃんと思いました。それよりは、自分たちがナンバーワンだと思える技術を使い続けなければいけないなということを考えたんです。でもやっぱり前回うまくいかなかったので、「本当に大丈夫かな」と思っていた時に、食べログさんがRailsでリニューアル成功したということを聞きまして、「やった、すごい」と思ってすぐに食べログさんのところにお話を伺いに行きました。「実際どうやってうまくいったのか」とか「クックパッドでやるとしたらどうだと思う?」みたいなことを聞いて、そこで「Railsでいけそうだ」と思いました。
川井: なるほど。
橋本: 食べログさんもうまくいくという感覚をつかんでいるし、話を聞く限りはこれなら自分たちもいけるんじゃないか、という風に思えたんです。それで社内に戻って「Railsで行くぞ」と言ったときに、エンジニアの方が逆に「え〜!?本気ですか!?」っていう反応になってしまってたんですけど(笑)
川井: (笑)
橋本: でも「よく考えてよ。本当にRailsじゃなくていいの?」という風に説得して、「半年くらいかかるとは思うけどやっていこう」と話して決まったんです。
川井: 食べログさんの事例が後押しになったんですね。
橋本: なりましたね。
川井: あれのリニューアルも大きかったですもんね。でも社内でのRailsの技術者の育成もけっこう大変だったんじゃないですか。
橋本: クックパッド株式会社|橋本健太氏最初は、育成というか、まず自分を育成しないといけないという状況でした(笑)でも突然「Railsで行こう」と決めたというわけではないんです。その半年前くらいに社内の新規事業でBtoBのデータ提供サービスみたいなものを作ることになって、「どうせならRailsで作っちゃおうよ」ということでエンジニアの一人が受け持つことになったんです。だから彼がどちらかというと一から勉強して、本当にアジャイルな開発がRailsならできるのかどうかという検証も含めて作り込んでいって、それがきちんと完成できたので、ある程度の規模のものは作れるようだというのはつかんでいました。
川井: なるほど。じゃあそんなに大きなトラブルもなくリニューアルにこぎつけたという感じですか?
橋本: そうですね。そうは言ってもリニューアルはけっこう大変でしたけど(笑)開発自体も新しいものですし、社内にすごく経験の長い人がいるわけでもないので、わからないことだらけのまま進めていく感じでした。でもやっぱり作っていくと、実際に使われるものを作るのでだんだん作れるようになってきたんですね。問題はどちらかというと、前回の約5倍の450万人という規模のリニューアルということで、そのシステムづくりのほうが大変でした。
川井: トラフィックが多いのでそれに耐えられるかということですか?
橋本: そうですね。どうやって耐えさせるかということですね。
川井: そのあたりって一番不安視されているところだと思うんですけれども、もう問題ないということですか?
橋本: はい、問題ないですね。やっぱりRailsでやろうと決めた時に一番そこが気になったんですよ。Railsは遅いと言われていて、ColdFusionはJavaなので早いといえば早いんです。Railsにして何倍か遅くなったりしないかという心配はありました。でもやっぱり、遅いのはデータベースだよねという話になって、データベースの遅さとかディスクI/Oの遅さに比べたらRailsの遅さなんて大したことはないんじゃないか?ということは最初から思っていました。実際に今やっていても、思ったより遅いかなっていうのはあるんですけど(笑)、でもRailsがボトルネックになるわけではないんですよ。
川井: なるほど。クックパッドさんはすごい成功事例として挙げられますね。
橋本: そうですね。
川井: 食べログさんに続く大きなリニューアルでしたよね。
橋本: ただリニューアルも割と進んできた頃に、Railsで作られている「Twitter」がけっこう大変らしいよ、という話になって、「Twitter」のページビューはどれくらいなんだろう、とAlexa(アレクサ※全世界のWebサイトの訪問状況を調べ、訪問者数の多いページをランキングする事業を行っているサイト)で調べてみたら「あれ、クックパッドの方が多い」ということがわかって青ざめたりしましたね(笑)
川井: (笑)
橋本: あんな大変そうなところよりも多いトラフィックをさばかなければならないのかと。
川井: 瞬間が多そうですもんね。Matzさんとかは「Twitterがちゃんと動いてる」ということをRubyがスケーラビリティ的なパフォーマンスにおいて問題ない事例としてあげてますよね。
橋本: クックパッド株式会社|橋本健太氏そうなんですよね。今、Alexaで見るとクックパッドは7位なんですけれど、その上位7サイトのページビューをランキングにして見るとクックパッドは世界3位なんですよ。
川井: すごいですね。
橋本: はい(笑)なので、トラフィックという意味では3位くらいの規模のものがRailsで動いているということです。捌けています。
川井: なるほど。そういえば、うちの会社でRailsセミナーをずっとやってるんですよ。
橋本: そうですよね。
川井: Railsをいかに商用化するかということをテーマにこの1年はやっていまして、おそらくさっきの話は色んな方が聞きたい話だと思いますね。
橋本: リニューアルが成功するまでは、あんまり話すこともないだろうなと思ってたんですけど(笑)今ならある程度話せることもあるかと思います。
川井: クックパッドセミナーでは、是非ともセミナーの開催をお願いします!
今後取り組んでいるテーマ
川井: リニューアルを終えられて、今取り組まれているテーマは何ですか?
橋本: クックパッド株式会社|橋本健太氏今は、具体的なところまではお伝えできないんですけど、サービスの面ではせっかくRailsにしたのでユーザにとっての価値って何か?というとこを考えて、それを実現していきたいと思っています。僕はエンジニアなんですけれども、プログラムの技術が大事であること以上に「どういう価値がユーザさんに伝わるのか」というのがやっぱり大事だと思うんですよ。モチベーションもそこなんです。今は、リニューアルして技術は手に入ったけどまだ「価値」をユーザさんに提供しきれていない、というのがフラストレーションとして     ものすごくあるので、そこをこれからやっていきたいなと思っています。
川井: エンジニアでありながらサービス視点をきっちり持っていて、それがモチベーションになっているということも言い切られているのですが、そうではないエンジニアの方も世の中にはいると思うんですね。そこにはどういう差があるんでしょうか?
橋本: どうなんでしょうね・・・。
川井: けっこう「サービス」というよりは「自分のコード」というのを大事にしている方が多いと感じていて、「自分のキャリアプランが見えない」というエンジニアの方の、根底はそこにあると思っているんです。特にWebアプリの世界ではユーザーを見ずにソースコードと格闘するというのはナンセンスだと思います。
橋本: でも結局は「何が好きか」ということだと思うので、やっぱり好きなことを生かした方がいいと思うんですけどね。そうじゃないとやっぱりキャリアも積めないと思うんです。僕はたまたま好きなことが、クックパッドにジョインするということになったときから「お客さんに何を提供して、どんなフィードバックがもらえるか」「それを元にもっと上のことができるか」っていう風に考えていくことになったんですよね。そもそもエンジニアではなかったので、それから手段と、自分が得意としているらしいことがわかったのでエンジニアとしてやっているんですけれども。
川井: ソースを書くことだけで一生食っていける、というスキルを持った方だったらいいと思うんですけど、あんまりいないと思うんですよね。日本ではやっぱりソースを書く人の給料はあんまり上がらないっていうのがあって、そういう方はどうしていこうかなっていうのもテーマだと思うんですが、そのあたりはどうでしょうか?
橋本: クックパッドの中の哲学というか、企業的な哲学として「好きなことをやりましょう」というのがあるんです。好きなことをやっていないと「やってないじゃん!」って怒られるんです(笑)好きなことと、得意なこと、これなら自分は世界一になれるよねっていうことをやってくださいと言っています。それにプラスして、儲かること・自分の給料をあげられると思うことをやりましょうとも言っています。この3つが実現できることをやり続ければ、会社もハッピーだし、エンジニアもハッピーになれるという哲学ですね。
川井: なるほど。
橋本: どれかだけじゃダメというのもあって、けっこう技術の考え方だと「好きなこと」と「世界一になれるところ」、そこまではいけると思うんですけど、そこと「儲かる」というところにつなげるのが大変なのかなと思います。
川井: そうですね。
橋本: クックパッド株式会社|橋本健太氏クックパッドみたいな、直接ユーザさんを相手にしている会社ならば、ユーザさんをハッピーにすることができれば直接会社が儲かるので、そこを実現できる人というのが必然的に儲かる人間になっていくという感じですね。うちの場合は、という話になっちゃいますけど(笑)
川井: いえいえ。やはりそういう理念できっちりやられているからうまく回っているのかなと思いますね。やらされて辛いと言いながらソースを書いている人もいますし。歴史的な背景も含めて、なかなかエンジニアって陽の当たらない部分があったりして、そこを解き放ちたいっていうのがうちの企業コンセプトなんです。
橋本: でも「やらされている」ことでも、よく考えてみたら技術的なことってけっこう楽しいはずですけどね。
川井: そうですよね。
橋本: それで「楽しい」と思ったら、やることってけっこう変わるんじゃないかな、と思いますね。
川井: 気の持ちよう、みたいなところですかね。
橋本: そうですね。同じ課題があっても、楽しいこととして自分のチャレンジになれば、与える価値の方も変わってくると思うんですよ。それを続けていけばキャリアにつながるんじゃないかなという気はします。
川井: なるほど。わかりました。ありがとうございます。
今後のことと、若手エンジニアにアドバイス
川井: 個人的なお話でけっこうなんですが、今後どういう風に生きていこうかなとか、先のことはどんな風にお考えですか?
橋本: 僕は、そうは言っても実はエンジニアでやっていきたいんですよ。
川井: なるほど。
橋本: クックパッド株式会社|橋本健太氏なぜかっていうと、さっき言っていた3つの輪っかみたいなものを自分で改めて考えてみたときも、やっぱりプログラムをしているとき、ものを作っているときってものすごく楽しくて、すごくやりたいことなんですね。それプラス、お客さん、ユーザさんがハッピーになるようなものを自分が提供できているというのがまたたまらなく楽しいんです。あとはやっぱりやってみて、自分はこれが得意で、この道は自分に向いているなということがわかって、だから自分は幸せなままエンジニアとしてやっていけるなというイメージもつかめて、それができたら実際自分も成長していけるなというのもわかるのでエンジニアをやっていきたいと思っています。
川井: お客さんのことを考える1プログラマでありたいといったところでしょうか。
橋本: そうですね。
川井: 会社の運営とか経営といった部分はどうですか?
橋本: そこも色々とチャレンジはしているんですけれども、あんまり得意じゃないですね(笑)
川井: そうなんですか。
橋本: 得意なことに集中した方がいいな、というのはすごい思います。まあそれはステージなんだとも思うんですけどね。僕はまだ自分のステージとしては、そっちよりはエンジニアでやりたいなと思うので。
櫻井: 社内では完全にスペシャリスト型ですね。フェローなんです。
川井: フェローなんですね。かっこいいいですね。やっぱり信頼があるからできるのかもしれないですね。
櫻井: そうですね。すごく信頼されてますね。
川井: そうですよね。そんな橋本さんから、若いエンジニアにアドバイスをいただけますか?
橋本: クックパッド株式会社|橋本健太氏今まで話したことと同じなんですけれども、やっぱり好きなことをやらないと伸びないですね。好きなことをやって伸ばすのが一番の近道だと思います。
川井: 確かに好きなことをやっているときが一番輝いているし、一番モチベーションが上がるというのは事実だと思いますね。
橋本: 身につける技術としては、好きで技術をやるのはいいんですけれども、やっぱりちゃんと完成させなきゃだめだと思うんですよ。「プログラミングができる能力」と、それで「何かものを完成させることができる能力」っていうのは実は微妙にずれていて、「ものを完成させる能力」っていうのをちゃんと身につけていかないといけないと思います。
川井: そうですね。
橋本: うちが「趣味でもいいから何かものを作っている」というのを重視するのはそれでですね。ちゃんとものを完成させる力を持っている人じゃないと、実際ユーザに価値を提供するところまでできないということがありますね。
川井: なるほど。まず「好きであれ」ということと「好きなものをとことんやって完成させることが大事だ」ということですね。
橋本: そうですね。
川井: 非常に参考になりました。本日はどうもありがとうございました。
橋本: こちらこそありがとうございました。
クックパッド株式会社|橋本健太氏 クックパッド株式会社|橋本健太氏


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会社案内 クックパッド株式会社
http://cookpad.com/info
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所在地 〒108-0071 東京都港区白金台5-12-7 MG白金台ビル5F
事業内容

料理サイト「クックパッド」及び携帯版サービス「モバれぴ」の企画・運営、食の検索データサービス「たべみる」の販売、マーケティング支援事業、広告事業、出版事業



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