川井: | その後のアクションはどんな感じだったんですか?
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山本: | 2、3年はその会社にいたんですが、やっぱりいる以上、ハードウェアが嫌だというわけにはいかなくて、会社は辞めてしまいました。その後は、派遣みたいな形でルーターの設定ですとかネットワークまわりの仕事をしていたんですが、あるときに大学のヘルプデスクの仕事があったんです。そこの居心地がよくて1年、2年続けてしまったんですが、かなりの時間があったんで、LinuxとかPHPとかを覚えました。
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川井: | 仕事以外で、ですよね?
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山本: | そうですね。仕事とは別で覚えました。
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川井: | 派遣の形態を選んだのはどういう理由からだったんですか?
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山本: | 前の会社を辞めたときは、あまりいいやめ方ができなくてだらだらしていて、なので、すぐに他の会社に社員として入るのは抵抗があったのかなという感じですかね。
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川井: | 会社に就職するというのに抵抗があったってことですかね。
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山本: | そうですね。
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川井: | 派遣自体には抵抗がなかったんですか?
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山本: | それはなかったですね。
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川井: | そうなんですね。「派遣」っていうとエンジニアにとっては抵抗があるみたいで、「僕が派遣されちゃうんですか?」みたいな人もいるんですよ。一般的に派遣会社っていうとエンジニアは集まりにくいですからね。
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山本: | そうなんですか。でも正社員は正社員でメリットはありますけど、派遣は派遣でメリットもありますよね。責任分担がはっきりしているとかそういうのもありますよね。私の場合は正社員の頃の責任が重すぎたっていうのがあったのかもしれませんね。
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川井: | ある程度、明確な範囲というものがあって、その中で自分を生かせるっていうんでしょうかね。やりたい仕事の領域が限定されているとそういう思いもありますよね。
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山本: | そうですね。
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川井: | その後はどうされたんですか?
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山本: | アルバイトでネット系のベンチャーに入ったんですが、行ってみたらマンションの一室で、社長は当時の私と同じ年の27歳の人で、バリバリのベンチャーでしたね。
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川井: | 何年くらいいたんですか?
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山本: | 2年くらいですかね。
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川井: | 結構最近の話ですよね。
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山本: | そうですね。当時はネットブームの時期で、社長と友人が個人でやっていたんですけど、VCから投資があって結構資金が潤沢になったみたいで、知人をいろいろ集めてやっていたんですが、最終的には楽天に買収されました。
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川井: | そうなんですか。その会社ではどんな仕事をされていたんですか?
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山本: | そこでは、PHPとORACLEですかね。もともとNTで作っていたサイトが重たいので、PHPとORACLEに変えるという仕事をやっていたんですけど、その会社にいるうちに、個人で頼めないかという依頼がきたんですよ。そうしているうちにSOHOになったって感じですかね。
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川井: | どういうルートから仕事の依頼が来るんですか? 個人事業主になろうって思っている方が一番不安なのが、本当に仕事がもらえるのかっていうことだと思うんですよね。なので、どういう流れでオファーが入るようになったのか教えていただけませんか?
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山本: | なるほど。私の場合は、最初に仕事があったので、やっていたらそのままSOHOになっちゃったっていうパターンなんですよ。
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川井: | 開発の他には、何か並行してやっていらしたんですか?
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山本: | PHPカンファレンスみたいなものには出ていましたし、自分で「SIMPLE」というSOHOのコミュニティみたいなものは作ってはいましたね。
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川井: | 人の輪を作って、仕事を回しあったりということですね。
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山本: | そうですね。それも目論見の1つにありましたね。SIMPLEのメンバーで当時4、5人だったんですが、毎月ミーティングと称して場所と転々としていて、オン・ザ・エッヂ(現ライブドア)の会議室を借りたときに20人くらいが集まったこともありましたね。当時はかなり活発にやっていて、仙石さんとはそこでお知り合いになりました。
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川井: | SIMPLE自体の設立趣旨みたいなものってどういうものだったんですか?
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山本: | 宮原徹さん主催のオープンソース系のカンファレンスでSOHOの方と知り合って、メールでやりとりするうちに他のSOHOみたいな人の話も聞きたいよねって話になったんです。あまりSOHO同士のやりとりってないんですよ。
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川井: | そうなんですか。
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山本: | 結局はどこかの企業から仕事をもらう下請け的な立場なので、下請け同士があまり接したりしないんですよ。ですから、お互いに困っていることを相談したりとか、技術情報とかを交換できる場を作りたかったんです。やっているうちにいろいろとアイデアも浮かんできたりしましたしね。私はシステムしかできなくてデザインはできないんですけど、デザインも一緒にっていう依頼があったときとか、Linuxしか分からないところにWindowsとつなげるような仕組みの依頼がきたら、断るしかないんですが、それをデザインができる人やWindowsが分かる人と一緒に、SIMPLEとして仕事を請ける仕組みができないかなって模索した時期があったんです。でもリスクが高すぎるんですよね。結局エンジニアの集まりなので、みんな手を動かしたくて、マネジメントしたい人がいないんですよ。
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川井: | そうですよね。
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山本: | 結局、SIMPLEとして請けた以上は誰かがやらないといけないじゃないですか。じゃあ、誰かに頼んでその人が途中で逃げた場合、誰が責任を持つんだということとかもあって、結局、仕事がきたときにSIMPLEの人で誰か空いてる? みたいな感じでやっていますね。
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川井: | 個人的なつきあいで、ですね?
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山本: | そうですね。個人的にやっていますね。
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川井: | こういうSOHOのコミュニティとかネットワークって今は、結構あるんですか?
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山本: | 今は、どうなっているのか分からないですね。SIMPLEの月1回のミーティングも自然消滅してしまっている状態ですからね。土曜日の会議室が必要なので、それが難しいですね。
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川井: | だいたいどれくらいやられるんですか?
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山本: | 15時〜夕方までやって、そこから呑みって感じですね。
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川井: | ルノアールの会議室とかいいかもしれないですけどね。
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山本: | それも考えたんですけど、参加者から一切、お金をとらないっていう考え方だったんです。たとえ100円であれ、お金をとったら参加者としてはそれだけの価値を期待するじゃないですか。100円の価値がなければ次からきてくれないじゃないですか。そういう風にはしたくなかったんです。
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川井: | なるほど。それはこだわりですね。
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山本: | そこでプロジェクターを出して、あれこれやって、情報交換したりしていました。
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川井: | 今は、そういう活動が下火になって、個人で動かれている状態なんですね。
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山本: | そうですね。SIMPLEの頃の交友関係は続いているのですが、細々とメーリングリストをやっているくらいになってしまいましたね。
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川井: | 独立されてから、仕事の不安みたいなところもあれば、いいところもあると思うんですが、山本さんの経験の中ではどうでしょう?
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山本: | なし崩し的にSOHOをやっちゃっているんですけど、いい点で言えば純粋に仕事が選べるということですよね。安くても面白そうだと思ったら飛びつきますし、高くてもつまらなそうな仕事であれば、お断りするみたいな形ですね。悪い点といえば、当然不安定ですよね。どうしてもSOHOだと自分で営業して、自分で打ち合わせして、自分で開発するじゃないですか。そうすると、PHPの案件はロングスパンじゃなくて、2ヶ月、3ヶ月なんですが、2ヶ月、3ヶ月経って、よし納品して終わった、次は何をやろうかって思っても空いちゃうんですよ。それで次の1ヶ月はまた仕事を探してみたいな感じになって、収入はなくなっちゃうんですよね。
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川井: | なるほど。
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山本: | それを嫌う人は、どこかの会社と下請け的に付き合って、それを納品したら次はこれみたいに定期的に仕事を貰うっていう方もいましたね。
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川井: | 山本さんとしては、それは嫌なんですよね?
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山本: | ええ、こちらの立場が弱くなりすぎてしまいますからね。切られたら終わりですしね。それよりも細々とあちこちにコミュニケーションをとってという方が好きですからね。
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川井: | じゃあ、事業会社みたいなところという感じですね。
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山本: | そうですね。中小企業がそれなりのSierさんに発注しちゃうと結構な金額いっちゃうじゃないですか。そうなると、まわりまわって、私のところに問い合わせがくるわけなんですよ。
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川井: | 実際に年収のぶれとか大きいんですか?
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山本: | めちゃめちゃ大きいです。
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川井: | ちなみにどれくらいのぶれがあるんですか?
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山本: | 本当にいい案件がちょこちょこ来る年とない年で倍くらいの差がつきますかね。
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川井: | 倍になったり、半分になったりっていうことですか。
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山本: | はい。
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川井: | なるほど。これはなかなかスリリングですね。半分になったときのベースはそこそこなんですか?
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山本: | 半分になったときのためのリスクヘッジで最低限のものが得られるように週1回どこかで仕事をしたりはしていますよ。さすがに生活できないですからね。
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川井: | 山本さんの場合、コミュニケーションも長けているようですけど、それが苦手は人は大変ですよね。
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山本: | そうですね。厳しいと思いますよ。いろいろな人とお会いしましたけど、技術力はあるんだけどもコミュニケーション能力がないって方も結構いらっしゃるんですよね。やっぱり技術者でいいソフトを作る人はいるんですけど、そのソフトの良さを上手く伝えないと結局お金にならないんですよ。
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川井: | そうですよね。そういった意味も含めて、SOHOとか個人事業主で成功するための条件ってどういうものだと思いますか? こういう能力がないとしんどいんじゃないのっていうものってありますか?
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山本: | まずは、最低限のコミュニケーション能力ですよね。まあ、それは企業でエンジニアをやる上でも必要ですけどね。企業の中ではマシンルームにこもってやっていればいいっていう時代じゃないですからね。
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川井: | 技術を極めたくて顧客志向もないし、コミュニケーションもしたくないみたいなエンジニアもいるじゃないですか。それですと個人事業主としては難しいってことですよね。
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山本: | そうですね。それですとどこか大手の企業の研究所にいくのがいいと思いますね。
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川井: | なるほど。
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山本: | 私は、幸い人と話すのが好きなタイプですからね。
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川井: | そうですよね。
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山本: | むしろ営業をやりたいなって思っているくらいです。
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川井: | そうなんですか(笑)
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