川井: | 卒業後もそこの会社に残ろうとかっていうのはなかったんですか?
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竹迫: | それはなかったですね。やっぱりHPの子会社だったので、どうしても何かソフトウェアを作るとか提供するとかは、HPの提供するハードと絡めたりなど必ずするようになっていたので、それだとやっぱり選択肢っていうのが狭まってしまうじゃないですか。親会社の制約に縛られない独立系のSIの会社とかに入りたいなって思って、ドリーム・アーツっていう会社に入りました。
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川井: | 偶然なんですけれども、僕INSUITE:インスイート(以下 インスイート)使ってましたよ。
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竹迫: | あっ、本当ですか!恐縮です。(笑)
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川井: | いえいえいえ。山本社長ですよね。
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竹迫: | はい、そうですね。
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川井: | おととし1回お邪魔してきました。社長営業っぽいですよね(笑)。
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竹迫: | そうですね。社長は起業前にもともとインテルのマーケティングを担当していて、MMX Pentiumとかの日本のブランディングとかをやっていましたので。
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川井: | すごいですよね。8カ国のエンジニアが在籍してらっしゃるとお聞きしました。
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竹迫: | そうですね、今はかなり増えていると聞いています。僕がいたときから多国籍部隊で、日本語の文字コードにめちゃくちゃ詳しい中国人の優秀な先輩エンジニアや、インド人のエンジニアとか、あとドイツ人のエンジニアとか色々いましたよ。
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川井: | いらしたのってオフィスが外苑前のときですよね。
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竹迫: | そうですね
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川井: | そちらにもお邪魔してました。(笑)
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竹迫: | 恐縮です。(笑)
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川井: | ちょっと偶然だと思って、びっくりしちゃいまいた。選んだのは、何かきっかけとかあったんですか?
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竹迫: | はい。実は広島ラボっていうのを作ったのが、ちょうどその年でして、やっぱり広島という地方だと、ソフトウェア開発専門でやってる会社っていうのは、そんなになくて、どうしても、メーカー系の子会社とかになっちゃうんですよね。例えばNECさんとか、日立さんとか、富士通さんとかの子会社とかになっちゃうので、やっぱり、それとは違う会社にしたいっていうのがあったんです。
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川井: | なるほど。
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竹迫: | 独立系のITベンチャーにしたかったので、そのときドリーム・アーツが広島ラボっていうのを作るっていうのを偶然知って、それが応募のきっかけでしたね。
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川井: | なるほど。
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竹迫: | それで、地域でえらんだという感じですね。
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川井: | もともと、お勤めは広島でスタートしたという感じなんですかね?
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竹迫: | そうです。広島です。
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川井: | そういうことなんですね。ドリーム・アーツさんはいかがでしたか?
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竹迫: | 面白かったですね。やっぱりベンチャーというのは、すごく尖っている面白い人達が集まっていて、非常に刺激になりました。
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川井: | そうですか。
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竹迫: | あとは、そのときは、ソフトウェア専門で開発している会社っていうのが初めてだったので、ソフトウェアエンジニアリング、いわゆるソフトウェア工学というのを、そこで叩き込まれました。
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川井: | ドリーム・アーツさんって、やはり技術力は高いですよね。
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竹迫: | そうですね。かなり優秀なプログラマと、あとQAの専門部隊もチームとしてかかえていますからね。もともとマイクロソフトでQAをしていた人達とかが、引き抜かれて入っているんですよ。やはり、インストールベースのプロダクトなので、出荷後にバグがあると、どうしても、あとの対応が大変なんです。
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川井: | そうですよね。
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竹迫: | それまではWebアプリっていうのは、どちらかというと、なんか開発者がさくっと作ってテストはほどほどに、そのままリリースするような、イケイケGOGOみたいな感じでしたけれどもね(笑)
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川井: | あははは
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竹迫: | それとは全く違うやり方なので、非常に最初は衝撃を受けましたけれども、やっぱり品質とかっていうのを高めるには、こういうやり方がやっぱり全体としては効率がいいんだなというのは思い始めました。テスターという職業をリスペクトできるようになったのはこの頃です。
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川井: | ドリーム・アーツさんはどんな開発環境なんですか?
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竹迫: | 私が開発していったのは大企業向けのグループウェアで、それはPerlで書かれていましたね。
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川井: | なるほど。一昨年でしたっけ、郵政省のポータルをとったんですよね?
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竹迫: | はい、よくご存知ですね。
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川井: | すごいですよね。
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竹迫: | ちょうどそれが決まった後に、私は退社してサイボウズ・ラボに入社っていう形になりました。
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川井: | なんか、犬のポストを持ってるようなやつですよね。
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竹迫: | そうですね。
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川井: | 郵政版の犬のイラストを見て、うわあ感慨深いなと思ってるんですけど。(笑)
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竹迫: | 僕が入社したころは、インスイートワンという小規模向けのグループウェアを作っていたんですけれども、大企業向けのエンタープライズのものを作ろうということで、その新製品の開発を広島ラボで一部、他のメンバーとかと一緒にやっていました。
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川井: | インスイートの、小規模版から大規模版へのバージョンアップという感じですかね?
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竹迫: | 大企業でも使えるように組織構造から作り直したものです。
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川井: | そんなことをされてたんですね。
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竹迫: | そのときに、やっぱりperlだとCGIで動かすと遅いから、Apacheにモジュール組み込みのmod_perlを使って安定的に動かす技術を確立したりしました。あとは、大人数が同時に使ったときに起きる問題とかを防ぐためのチューニングや運用上の対処をしたりしてました。
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川井: | コンセプトはナレッジですよね?
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竹迫: | はい、そうですね。
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川井: | サイボウズ・ラボさんもナレッジって感じだと思うんですけれども、ナレッジってことにご興味の繋がりはあるんですか?
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竹迫: | そうですね、それはありますね。やっぱり情報共有っていうのを、会社の中とか、いろんな組織とかコミュニティの中で、どうやったら効率的にできるかとか、それによって人の思いとかも変わったりするので、非常に興味はありますね。
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川井: | 私が昔やろうとしていたのは、イメージとしては煙草部屋なんです。
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竹迫: | はい、はい。インフォーマルなコミュニケーションですよね。
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川井: | インフォーマルなコミュニケーションをできないかという風にプランして、企画してやっていたんですけれど、うまくいきませんでした(笑)
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竹迫: | ははは(笑)
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川井: | なんかナレッジって言葉は一時期すごく流行ったじゃないですか。
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竹迫: | 流行りましたね。
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川井: | いま、かなり廃れている感じもするんですけれども。
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竹迫: | そうですね。昔はナレッジマネジメントとかKMっていうキーワードとかは流行りましたけど。
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川井: | 野中先生とか、あのへんがすごく出てましたね。
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竹迫: | まあ、結構そのキーワード先行っていうのは難しいところですよね。
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川井: | そうですね。
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竹迫: | 結構、学者の方がナレッジって言われているモノは、企業の現状とそぐわなかったりする部分も結構あったりとかするんですけれど。
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川井: | やっぱりなんでしょう、その仕組みがあることと現実に運用していくことって、 多分セット論なんだろうなあっていうことを思いますね。
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竹迫: | そうですね。だから、うまくまわせる仕組みが大事で、その中でコンピュータっていうのは、ある程度コミュニケーションとかナレッジとかを上手くまわすためのツールの1つのようなものなんですよね。
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川井: | 確かにツールですよね。幻想的にこれがあるとなんでも出来るって思ってしまう文化が当時あったような感じでしたね。
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竹迫: | ああ、なるほど。
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川井: | それが、やっぱりなんか足枷になるっていうんでしょうか、全員が、一人でも使わないと崩壊するみたいなことになるじゃないですか。
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竹迫: | はい
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川井: | そうじゃなくて出来る人から広げ始めりゃいいじゃんっていう発想が当時出来なかったんですよね。
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竹迫: | なるほど。
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川井: | 当時は全員がスタートしようとして。
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竹迫: | そうですよね。
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川井: | 「手帳焼くぞ」ぐらいな感じでしたね(笑)
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竹迫: | なるほど。PDAとかノートパソコンも、みんな社員一人一台みたいな感じですもんね。
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川井: | iPAQを買って、インスイートを搭載して、全営業マンに持たせて、いいから全部おぶって入れるんだぞみたいな感じだったんですけど、いきなり言われても無理ですよね?
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竹迫: | でも業務が定型業務の場合とかだと、PDAは上手く浸透している部分もありますね。
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川井: | なるほど。
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竹迫: | 今だと家電量販店さんとか、POSの連動とかで、PDAを使ったりするのがほぼデファクトになったりとかしてますね。ただやはり、営業さんとか、あと技術職の人とか、非定型業務の部分の占めてる割合が多い人たちっていうのは、それとは別の仕組みが必要で、柔らかいナレッジをどう扱うかみたいな話になるんだと思うんです。
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川井: | そうですね。営業系はSFAがベースで、ナレッジが付属的についてるみたいな感じで落ち着いている感じがしますね。
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竹迫: | そうですね。あとは客先訪問とかのスケジュールと連動するっていう話ですよね。
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川井: | なるほど。全体としてはそういうテーマをお持ちだったんですね。
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竹迫: | そうですね。それで、何年間かグループウェアを作っていて、やっぱり会社の中で企業向けのソフトウェアを作るっていうのは、ある程度自分自身の中で限界を感じたんです。
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川井: | なるほど。
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