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トシくんは、IT専門学校を卒業後、中規模SIerにて働くコーディング大好きな若手SE。 プログラミングならなんでもござれ!…と強気な一方で、商慣習とかについてはまったくの門外漢。故に「なんすかそれは」と、失敗なんかもポコポコと。 そんな彼の体験談。はてさて、今回の話やいかに。

 今をさかのぼること十ウン年前。また私がプログラマになって間もない頃のことで、「はじめて現場でプログラム組むぞー」と、ワクワクしながらも若干の不安を覚えていた…そんな若かりし頃のお話です。

 え?いったい私の年齢はいくつなのだ?

 はっはっはっ、そんなこまかいことは気にしちゃいかんのココロですよ。


 さて、当時の仕事は、とある生命保険会社さんの「保険料資産運用システム」を作るというものでした。

 総勢10人程度のプロジェクトで、客先に席を設けての開発作業。今じゃ懐かしい某F社のダム端末とCOBOL言語が開発環境で、はじめてということもあって、目をキラキラと輝かせたりなんかしながら、私はその仕事に没頭していたのです。


 ちなみに担当は、ある年次処理を行うモジュールの作成でした。


「年次だから、12月末で処理すりゃいいんだよな」

 コーディング作業はスケジュール通り順調に進みました。そうして工程の締めとして、コードレビューを行う日がやってきたのでした。

「ここの字下げはさ…」

 

「ここでこの処理するのは無駄だろ?」

細々とした指摘や、処理の無駄に関する指摘。ははぁと感心するやら、細けえなぁと驚くやら。けれども、どの点も大きな問題にはならなさそうだ…という指摘ばかりなことにほっと胸をなで下ろしつつ、コードレビューの時間は過ぎていきました。


 そんな中、

「ところでこれ、12月末で処理が走ってるけどさ」

 

ボソリと先パイが言いました。その手には赤のボールペン。トントンとプリントアウトした用紙を叩くペンの先には、「N=12」という定数がきられていました。

「はい!年次処理なので!」

 元気よく答える私。

「この年次処理って、"年末処理"ってことでよかったんだっけ。"年度末処理"じゃなかった?」

「は?へ?"ねんどまつ"…ですか?」

 なにが違うんですかと、思わず喉まで出かかりました。

「確認した?年末処理で本当にあってる?」。

 確認したもなにも、"ねんどまつ"なんて言葉に、あたしゃ馴染みがありません。


 けっきょく、「年次」が指してるのは「年末」なのか「年度末」なのかってところから確認作業が入ることとなり、その前提が崩れたことで修正範囲は多岐にわたり…。

「プログラミングって厳しいなぁ」

 そんな教訓を、私は早々に噛みしめる結果となったのでした。

というわけで「年次処理」なんですけど。

普通は「年次処理」といえば、年度末の処理を指しますね。

あ、そーなんだ。んじゃ3月末ってことですか?

いや、3月末が確かに多いけども、やっぱりそこは会社によって違いますよ。スーパーなんかだと2月だったりするし、外資系は12月が多いかなぁ。

え?そなの?それはなんか理由があってそうなんですか?

外資だと親会社とあわせる関係で…とかね。多くは業界の慣習的にって理由なんでしょうけど。ある時期に7社ほど担当してたことがあるんだけど、その時は3月決算って1社もなかったですよ。

おお、そーなんだー。そういう意味では、そもそも「12月」が「3月」に変わったくらいでオタオタする羽目になるコード書いてた時点でアカンっぽいですね。

まぁ、そういうことになりますね。

ちなみに、「年末処理」と「年度末処理」って、それぞれどんなことをやるもんですか?それを知ってりゃ、今回のように「どっちだっけ?」ってなるのも防げると思うんですけど。

「年末処理」と言ったら「年末調整」とかかな。「年度末処理」は、やっぱり「決算」が代表的なとこですね。

つまりサラリーマン的には、「税金が返ってくる処理の月」と「給料が上がる(かもしれない)処理の月」ってことですな。

いや、そーかもしれんけど、それはわかりづらい例えでしょ。なんでそんな言い換えしなきゃいかんのよ。

だってフリーランスになったら、そういうのと縁遠くなっちゃったから、それがもう恋しくて恋しくて。

知らんがな。

作家・きたみりゅうじ
もとは企業用システムの設計・開発、おまけに営業をなりわいとするなんでもありなプログラマ。本業のかたわらWeb上で連載していた4コマまんがをきっかけとして書籍のイラストや執筆を手がけることとなり、現在はフリーのライター&イラストレーターとして活動中。
URL:http://www.kitajirushi.jp/
※大好評 Webエンジニア武勇伝にも掲載!第10回 きたみりゅうじ氏

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