前田: |
エンジニアに伝えたいことってありますか?
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川井: | 20代のうちに自分の将来の方向性を決めてほしいということです。
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前田: |
方向性ですか。何故でしょう?
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川井: | 本人の適性もありますし、どっちに進むかでやるべきことも全然違いますよね。例えば、技術の畑に進むのであれば技術のことをとことん極めればいいと思いますが、マネージャになるんだったら技術のことに加えて、マネジメントやコミュニケーションやリーダーシップのスキルを磨いたほうがよっぽどためになると思います。
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前田: |
方向性を早く決めてそのために必要なスキルを早くから磨いておくことが後々になって重要
になるということですね。
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川井: | それが幸せになるための最大のポイントだと思いますね。技術なのかマネジメントなのかをどちらにも決めずどっち付かずにやって成功する人はまずいません。それを30歳を過ぎてもまだ決めていない人がたくさんいますよね。ある組織の中でトップエンジニアじゃなければそのまま技術で食べに行こうなんて到底無理です。トップエンジニアになるなんてプロ野球の選手になるくらいの確率だと思いますよ。
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前田: |
非常に狭き門ですよね。
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川井: | だからこそ「技術でプロになれるのかどうか」を早い段階で見極めなきゃダメなんです。さらに言えば、技術に進むなら進むでいいと思いますが、「20代のうちに技術で生きていくための努力を本当にしていますか?」ということをその人達に問いたいです。プロ野球の選手は毎日走りこみをしますし、試合が終わっても素振りをしますよね。だって好きなことなら「家に帰ってからはやってない」とか「休みにはやらない」とかは絶対におかしいじゃないですか。本当に好きなことは四六時中やっていたいはずですし、四六時中鍛錬してるはずです。それで食べていこうとしている人達だったらなおさらです。だからそういう努力もしていないし、できないというなら技術でプロにはなれないですよね。だったら30代からはマネジメントをした方がいいです。この考えは相当僕の中では強いですよ。その技術でプロの道にいけるかどうかの瀬戸際にいる人達が、その道に行こうと決意した時に仕事はもちろん仕事以外でもどれだけの努力をしてきたかってことですよね。努力をしてきた人達の中のほんの一握りしかプロになれないんですから。
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前田: |
なるほど。川井さんも若い頃から仕事が好きでしたか?
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川井: | はい。楽しいし夜中や土日に仕事をすることをなんとも思わなかったですね。それに、どんなに会社の環境が悪かろうが、上司や先輩と相性が合わなかろうが「やりたいことしかやらない」ということを徹底していました。好きなことならどんな時でもそれを自分から好んでやることが重要ですよ。だいたい野球の選手でも「監督やコーチが気に入らない」とか環境のせいにしたりして練習をしていない人は2軍に落ちてしまって食べていけない可能性が高いですからね。
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前田: |
ほうほう。会社以外でも努力しなければ2軍に落ちてしまうのはエンジニアも同じということでしょうか?
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川井: | 同じことが言えますね。会社にいけばできるようになると勘違いしている人が多いです。それはグラウンドにいけばうまくなれると思ってるのと一緒ですよね。ビジネスでやってる以上、位置づけはサラリーマンなんですから会社のミッションが最優先ですし、お客様が最優先になるはずなので会社の時間だけでプロになれるだけのスキルアップをすることはかなり困難なことでしょう。
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前田: |
そういう状況も踏まえた上で「いまの自分が本当にプロとしてやっていけるのかどうか」を早く見極めろっていうことですね。
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川井: | 「社員への思い」があるとしたらそこなんです。20代後半になった人がプロとしてやっていけるのかどうかはそれまでの社会人生活をどう過ごしてきたかを見ればすぐ分かります。プロになるくらいならそれはもう相当腹決めして、それ以外には目もくれないっていう人生になるはずです。常にキーボード持ってるっていうくらいじゃないとダメなんです。本当にできる人達はパソコンがなければ昔ノートにコード書いていましたし、それくらい努力の度合いが違うんです。だから社会人生活で何も努力してこなかった人が、30歳になって初めて「さぁ努力しよう」っていったってそれはできないと思いますよ。結婚して、家族ができて、家も買ってって仕事以外にも色んなことがあるのに、何もなかった時期に努力してこなかった人が「どんどん忙しくなっていく中でこれまで以上の努力ができるか」っていったらそれは無理な話です。もっと言えば、若い頃なんてお金がないから仕事しかすることないですけど、今後は稼いだお金を使う時間だって増えてきますし、歳をとると共に体力的にも仕事できる時間だってどんどん減っていきますから。
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前田: |
なるほど。これまでのお話からすると「技術でプロになるのは相当難しい」という印象なんですが、それだと逆にプロにならないなら、どうすべきなのかが気になるのですが。
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川井: | 「プロにならない人はどうするのか」っていうのは相当重たいテーマですね。もちろん「その人達も救いたい」という思いはあります。別に新しい言語を身に付けることが全部本当のキャリアアップにつながるわけじゃないですし、プログラムの知識があるだけで重宝されるんですからそこから「プロマネ」「ディレクター」「営業」もしくは「キャリアカウンセラー」とか他の職種になったっていいじゃないですか。プロレベルになれないのにいつまでもコーディングにこだわってプロ並みの給料を貰おうなんていうのはありえないですよね。それならば今後のことをきちんと考えてやってコミュニケーション能力身に付けたほうがよっぽどよいと思います。
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前田: |
ふむふむ。では「プロにならない人」にとって今後必要なものは何ですか?
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川井: | やっぱり「顧客志向」と「チームワークを作るためのリーダーシップ」が必要だと思います。でもそれにはやっぱり訓練がいるのでその訓練をどうするかがポイントですよね。
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前田: |
なるほど。ただ最初のうちはその考え方に抵抗があるかもしれないですよね。
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川井: | 「自分はコーダーじゃない」ってまず自分が決めなきゃだめなんですよ。そして、コーダーだったのならコーダーの気持ちはわかるはずですし、お客さんとのトラブルだってそれこそ数多く見てきているはずなので、できないことはないと思います。だから、「プロになれない人」がダメだっていうわけじゃなくて、「プロになれないというのが事実ならその事実としっかり向き合った上で、どうすればハッピーになれるのか」っていうことを自分で考えてほしいんですよ。本当はトラウマがあって社会復帰したくてもなかなかできないような人もハッピーにしたいんですけど、そのためにはやっぱり近くにいないと難しいし、そうするだけの力が今のウェブキャリアにはない。だから齋藤ともよく「そういう人って支援するんだっけお断りするんだっけ?でもエンジニアを幸せにするっていう理念がある限り支援するんだよねって話してますよ。
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前田: |
では、それも嫌で「どうしてもコーディングをしていたい人」はどうすればいいでしょうか?
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川井: | その場合は家族や奥さんに「俺はこれ以上給料が上がらないけどそれでいいか?嫌だったら離婚してくれ」ってきちんと言ってほしいですね。それで奥さんや家族が「わたしも働くから気が済むまでやっていいよ」って了解してくれたらバンバンザイで「そんなあなた幸せモンだね」って言いながら僕も応援しますよ。いいじゃないですか、お金なくても奥さんや家族が「いいよ」っていってるんですし。それが本人の人生設計とちゃんと握るってことじゃないですか。ただしその場合は「もっと年収を上げてほしい」って絶対言わないことを約束させますけどね。でも現実問題子供もできたらそうもいってられないでしょうし、大半の話それは成り立たないですよね。
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前田: |
なるほど、だからこそ方向性を決めることが重要なんですね。
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川井: | そうなんです。上司とか経営者はその人生に影響を及ぼす存在なんだから、方向性を決めてあげることも含めて部下や社員に対して接しなきゃいけないと思います。「今は技術のことだけやってりゃいいから、時期がきたらまたいうから」なんていって方向性に関する意思決定を先延ばしにしている上司がよくいますけどそれは最低なんですよね。そんなの自分の都合のいいように使ってるだけですよ。表面上の優しさとか、その場限りの優しさなんて本当の幸せにはつながらないじゃないですか。なんていったってその人とその人の家族の人生を背負ってるんですよ。「幸せにしたい」っていうのは口だけで実現できることでもないし、調子よく仕事を振ってできる話でもないし、生半可なことじゃない。だからどこかでやっぱり進むべき方向性を決断させなければならないんですよね。ただ、その後うまくいくかどうかはもう本人の問題だし、運もあるので結果は結果として受け止めればいいと思います。
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前田: |
エンジニア側は「プロとして生きる」なら技術を身に付ける努力を、「プロ以外の道を選ぶ」なら「顧客思考」と「チームワークを作るためのリーダーシップ」を身に付ける努力をそれぞれしなければならない。だから、どちらにするのかの方向性を早い段階に決めなくてはならないということですね。
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川井: |
その通りです。ただ、そうは言っても方向性の決断は簡単にできるものでもないと思いますので本当に応援したい気持ちでいっぱいです。 |
前田: |
なるほど。大変ですね〜。 |
川井: |
大変ですね〜って君も考えなきゃいけないって気付いてるかぃ?(笑) |
前田: |
あ、そうですね(笑)しっかり考えます。今日はありがとうございました。 |
川井: |
はい、こちらこそありがとうございました。 |